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空港で、オンラインで シティキャストが「おもてなし」東京2020オリンピック・パラリンピック 競技大会
2021年9月5日、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)が幕を閉じました。新型コロナウイルスの感染拡大による1年延期、大半の競技会場での無観客、と異例ずくめの開催でしたが、選手はもちろん、多くの人たちが尽力して大会を支えました。その中にはシティキャスト(都市ボランティア)がいます。シティキャストは当初予定していた役割に代わり、「大会の応援」や「東京・地域の魅力発信」、「安全・安心な大会のサポート」など多くの人たちに「おもてなし」の気持ちを表しました。大会におけるシティキャストの活動を振り返るとともに、活動に参加した金子珠里亜さん、堀内宗隆さんにお話をうかがいました。
空港でのお見送り、
オンラインでの東京の魅力発信
東京都が運営するシティキャストのもともとの役割は、国内外からの旅行者に対する観光・交通案内、競技会場の最寄駅周辺での観客への案内などでした。無観客開催によりそれらが難しくなった中、空港での選手・関係者のお迎え、お見送りやオンラインを活用した東京の魅力発信など、工夫をこらした活動に多くの方々が参加しました。
空港では日替わりで「Welcome!」「See you」など思い思いのメッセージをメッセージボードに書いて掲げ、手を振って選手・関係者のお出迎え、お見送りを実施しました。
東京の魅力発信プレゼンテーションでは、シティキャストが薦める東京の観光スポット等をオンラインで配信し、個性の光るテーマが並びました。また、シティキャスト自らの写真とともにメッセージを掲げた「応援メッセージ」も発信。これらは「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会 東京都ポータルサイト(下記関連リンク参照)」でご覧になれます。
そのほかにも、聖火台周辺などの来場者への感染症や暑さへの注意喚起などの声掛けや、パラリンピックの学校連携観戦の児童・生徒を会場周辺で案内するなどの活動を行いました。
東京都オリンピック・パラリンピック準備局でシティキャストの運営を担当する宇賀神さん・川内さんは、「楽しみにしてくれていたシティキャストの皆さんに一つでも多くの活動の場を提供できるよう尽力しました。」「参加した方から『ユニフォームに袖を通すことなく終わってしまうかと思ったが、少しでも活動ができてよかった』という声を聞き、嬉しく思いました。」と話します。
「一瞬の出会いを大切に」
人との交流制限あるからこそ
学んだ
金子珠里亜さんは、東京の魅力発信プレゼンテーションと羽田空港での選手見送りに参加しました。プレゼンテーションでは「魅力あふれる東京」として、ご自身が大好きな新宿御苑や迎賓館赤坂離宮を紹介。空港では大声にならないように気をつけながら、選手らに感謝の言葉をかけ、気持ちを記したメッセージボードを掲げたそうです。「ほんの少しのやりとりだったのですが、相手の方にも喜んでもらえたのではないかと思います。コロナ禍で人との交流が制限される中、私自身も元気をもらえました」と金子さんは笑顔を見せました。
金子さんがボランティアに初めて参加したのは2014年。東京2020大会に向けて東京都が中高生を対象に募集した「おもてなし親善大使」の第1期生に応募したことがきっかけでした。東京での五輪開催が決まり、自分に何ができるだろうと考えていた時にポスターで親善大使を知り、当時中学生の自分にもできることがうれしくて参加。「おもてなし」を学ぶ研修を受けたり、都内の観光地を実際に訪ねたりしたそうです。
今回、無観客開催の中でのボランティアを通じて「一瞬、一瞬の人との出会いの大切さ」を学んだそうです。「接した人数や活動時間が短くても、一人ひとりと思い出を作ることができました。一瞬でも、自分が相手に何を与え得られるかが大事です」
金子さんは最近、アメリカの友人に言われてはっとしたことがあります。「日本にはおもてなし精神があり、日頃からボランティアに取り組んでいるので尊敬する」という言葉でした。「海外の人から見たら日常的にしている姿(思いやり)がボランティア精神にあふれていると感じることを日本の人に知ってほしいです」
金子さんはボランティアについて「本当に自分が成長できるので、これからも大きなイベントだけではなく、身近でできることをしていきたい」と考えています。
「コロナ後」見据えて
東京の魅力を紹介
自分の好きなことを軸に
他者と関わりを
堀内宗隆さんは、東京の魅力発信プレゼンテーションに参加して、築地、銀座、日本橋を紹介しました。30数年の会社員時代のおよそ半分を海外駐在員として過ごした経験から、3年前からは得意の中国語や英語を使い、全国通訳案内士として観光案内などに従事しています。各地の歴史や最新情報まで盛り込んだプレゼンテーションには「コロナが終息した後に来てもらう時の参考にしてもらえたら」という気持ちが込められています。
堀内さんが初めてボランティアに携わったのは2014年。東京で世界卓球選手権が開かれたことがきっかけでした。中学生のころから卓球をしていたことから、自分も楽しめて、人の役に立つことができればという理由だったと言います。東京マラソンでのボランティアをへて、今回のシティキャストへと至りました。
シティキャストに決まってからは、様々な資料を取り寄せ電話で最新状況を確認したり、自分だったらどこを案内してもらうとうれしいか、移動手段は何を使い、移動時間は何分か、ということを考えたりしながら過ごしていたそうです。活動の機会がほとんどなくなり「考えていたことはできませんでしたが、プレゼンテーションを通して少しは役に立つことができたかなと思います」。
堀内さんは、人と人が助け合う様子に触れるとほっとするそうです。「誰にでも、自分の興味のあることがあるでしょう。自分が楽しみながらするのと同時に、それを通じて人と関わったり、そのエネルギーを誰かのために使ってみたりと、少し違う視点で行動してみると、新しい世界が広がるかもしれません」とボランティアについて語りました。今は「コロナ後」を見据えて、「相撲部屋の朝稽古を見学したい」といった外国人観光客から要望の多いツアー企画を考えるなど、「無理をしないで気長に、細く長く活動するつもりです」と話しました。
(表記のない写真はいずれも東京都提供)
[ 関連リンク集 ]
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シティキャストによる情報発信(東京2020大会東京都ポータルサイト)
シティキャストから募集した、都内の魅力発信や大会への応援メッセージなどを掲載 -
シティキャストによる情報発信より金子さんのプレゼンテーション動画
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シティキャストによる情報発信より堀内さんのプレゼンテーション動画