活動のヒント
新型コロナウイルス感染症対策として全国の小・中・高校に出された臨時休校要請により、3月より子どもたちは学校へ通えなくなりました。また、子どもに関わる様々なNPOや非営利団体なども対面で活動することが困難となり、子どもたちの学びや体験の機会が失われることが危惧されました。しかし、「今できることは何か」を考え、活動を継続している団体も少なくありません。全国216カ所以上で、子どもたちにプログラミング学習の機会を提供する「CoderDojo」もその一つ。子どもたちの学習の機会を維持するために同活動がどのように継続されてきたのかを取材しました。(インタビュー:2020年6月27日)
「好きなこと」を共有できる
人と
一緒に学べばもっと楽しい
WEBサイト作成のためのコーディングや、アプリの制作などを学べる、子どものためのプログラミング道場「CoderDojo」には、決まったカリキュラムはありません。何をするか、どうやって進めるか、子どもたちの主体性が重視されます。Dojo(道場)という名前がついていますが、実はこの活動、2011年にアイルランドで始まりました。そして2012年5月には、下北沢オープンソースCafeというコワーキングスペースに当時関わっていた方々が中心となって、日本初のCoderDojo「CoderDojo Tokyo(現:CoderDojo 下北沢)」が発足されました。
当時から関り続けている安川さんは、次のように話します。「僕自身が小学生の頃は、プログラミングに関する話題を共有できる人は同じクラスにはいませんでした。ましてや、社会にいる多様な方々と一緒に何かを作ったり学んだりする機会はほとんどありませんでした。でも今では、CoderDojoというコミュニティを通して様々なバックグラウンドを持つ方々とつながれます。地域や国境を超えて同世代の方々とつながることも珍しくはありません。多様な世界とつながり、自らの主体性を持って学び続けられるコミュニティは、その1つ1つがとても貴重な場であると考えています」。
2020年より小学校でプログラミングの授業が必修化となりましたが、「CoderDojo」の活動との関係は競合するものではないそうです。「義務教育におけるプログラミングは、全国一律に機会を提供するという意味でも重要だと考えています。その機会がキッカケとなってのめり込み、自分の活動の幅をさらに広げるため、CoderDojoコミュニティを活用するという事例もありうると思います。それぞれの活動が、互いに補完し合う関係にあるのではないでしょうか」と安川さんは説明します。
ところが、人と人がつながることを軸に子どもも大人も学びあう「CoderDojo」も、新型コロナウイルス感染症対策による外出自粛の影響をうけ、対面での開催が難しくなる地域も増えてきました。しかし、「CoderDojo」が行った新たな取組には、海外からも注目されるような、コロナ禍で参考にできるヒントがありました。
必要な要素が揃い、
オンラインで活動を継続
コロナ禍で一気に広まったのがいわゆる「リモート○○」という言葉。ZoomやMicrosoft Teamsといったビデオ会議ツールの利用者が激増し、リモートワークはもちろん、リモート飲み会などを楽しむ人も増えました。渦中の地域にある「CoderDojo」の中にも、会場に集まって開催していた道場を、4月にはいち早くリモートでの開催に切り替え、活動を止めることなく子どもたちに学びの場を提供し続ける事例も少なくありません。
しかし、日本における「CoderDojo」の活動が海外から注目されたのは、こうした迅速な「リモート対応」そのものが評価されたわけでは無いようです。ではどのような点が評価されたのでしょうか。そのポイントを安川さんは次のように説明してくれました。
「ZoomやMicrosoft Teamsなどのビデオ会議ツールは、オンライン開催をスムーズにするための1つの要素であり、それが全てではないと思います。例えばオンラインでも学べる教材やプログラムが動かせるサーバー、それらを活用した事例集やノウハウなども大切な要素です。様々な企業からの支援のもとオンラインでも学べる教材が利用できたり、お互いの事例やノウハウを共有・蓄積できるプラットフォームがあったため、オンライン開催などの変化に対応しやすい要素が揃っていたと考えています。」
ボランティア活動を行う非営利団体の中には、その活動を寄付や企業協賛によって支えられているケースもありますが、共通する課題は、いかに多くの支援者から継続的なサポートを受けられるか、ということではないでしょうか。そこで、安川さんに、企業との連携を促進するため工夫していることを伺いました。
「活動の理念や内容を分かりやすく表現することも大切ですが、企業と連携する際は、それだけでは十分ではないと考えています。企業側の視点をこちら側も持った方が良いです。例えば、自分たちの非営利活動が企業にとってどんなメリットがあるのかをデータや事例で示すことは、企業側の協力者が非営利団体への協力について社内の稟議にかける場面で役立ちます。CoderDojo Japanのウェブサイトでは、参加人数の推移や道場数の推移などのデータが公表されています。こうしたデータや連携事例、よくある質問と回答などを用意しておくことは、企業側の意思決定の参考になります」
オンラインをリアルの代替ではなく、
新たな可能性にする
実際に、ボランティアに参加する方はどのような意識で取り組んでいるのか、また、オンラインによる新たな形式になった感想を、「CoderDojo」をオンライン開催した「CoderDojo稲城」のメンター(ボランティアスタッフ)の皆さんにお話を伺いました。
この日参加したメンターのうち、宮崎さん、松原さん、大串さんの3名は、IT関係の勉強会で出会いました。たまたま近所に住んでいることが分かったことから、地域で何かできたらいいなと考えていた折に「CoderDojo」の存在を知ったそうです。「ボランティアといっても、近所付き合いの一環のように感じています。何か特別な目的があるわけではないんです。ただやっていてとても楽しいかな」と宮崎さん。その楽しさはどこにあるのかについて大串さんはこう説明します。「子どもたちってすごくて、勝手に成長してどんどん難しいことにチャレンジするんです。それを見ていると、大人もちゃんとしなければって思わされます(笑)。参加したいという思いさえあればだれでも参加できるボランティアです」。
一方、違うきっかけでボランティアに参加しているのは、古賀さんと桑野さんです。古賀さんはお子さんが「CoderDojo」に通っていて、付き添っているうちに誘われて参加したそうです。「私はIT系の仕事をしているわけではないのですが、写真が好きなので、カメラマンとしてボランティアに参加していました。ところがいつの間にか、自分もプログラミングに興味を持ちはじめ、自分でもチャレンジするようになりました。仕事とプライベートは分けていますが、CoderDojoで得た知識のおかげで、仕事でプログラミングを担当する人との接点がもてるなどという相乗的なメリットもあります」という古賀さんにとっても、新たなチャレンジのきっかけになったようです。桑野さんは「自分のスキルを会社の仕事だけではなく社会で活かせればと思い、何かできないかと検索してこの道場のことを知りました。自分で門戸を叩いて参加したわけです」と言います。様々なきっかけで生まれたメンターが、「CoderDojo稲城」を支えています。
4月からすでに3回オンラインで開催している「CoderDojo稲城」では、今後オンラインとオフラインを同時開催するなど、融合して運営していくそうです。オンラインの意外なメリットについて宮崎さんはこんな具体例を紹介してくれました。「会場を取る手間がかからないのがオンラインのメリットです。これまでは会場優先の日程でしたが、オンラインではその心配はいりません」。一方で、今後の課題として「今日参加している子どもたちの裏に、実は回線の都合などで参加できていない子どもが居るかもしれないということを考えなければなりません。今後オフラインで開催した際に子どもの声を聞きながら、取り残される子どもたちがいない様に配慮していくことが大切です」と桑野さんは話します。
お子さんと一緒に参加した古賀さんが「自粛中、もっぱらゲームと動画サイトばかり見ていた息子が、CoderDojoには積極的に参加していました」と言うように、「CoderDojo稲城」が様々な工夫と周りのサポートでコロナ禍のような非常時にも活動を継続することは、子どもたちの居場所を確保するというということで大きな役割を果たしていました。
一般社団法人 CoderDojo Japan
CoderDojoは7〜17歳の子どもを対象にしたプログラミング道場です。2011年にアイルランドで始まり、世界では110カ国・2,000の道場、日本には216以上の道場があります。
住所:〒169-0075
東京都新宿区高田馬場1-28-10 三慶ビル4F ケイス新宿
一般社団法人 CoderDojo Japan
CoderDojoは7〜17歳の子どもを対象にしたプログラミング道場です。2011年にアイルランドで始まり、世界では110カ国・2,000の道場、日本には216以上の道場があります。
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一般社団法人 CoderDojo Japan
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[ いろいろな寄付で活動を応援するリンク集 ]
ボランティアに参加したい方
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青少年情報科学実践機構
在宅学習児童の環境整備のため、PC、タブレット、周辺機器等の寄付 -
特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会
不要になったおもちゃ、ゲーム、本、CDなど“モノ”の寄付で途上国の子どもを支援に。物品の買取金額が全額寄付金に。 -
Japan Hair Donation & Charity
頭髪に悩みを抱える18歳以下の子どもたちのメディカル・ウィッグを作るために長く伸ばした髪を寄付する -
NPO法人NGOリサイクル環境組合
文具小物の寄付、クレヨンや画用紙などの寄付
使わなくなった文具、小物の寄付で海外支援 -
rabbit
絵でつながるひきこもる人たちのコミュニティを画材で応援
もっと事例を探したい方
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ひとりじゃないよPJ
シングルマザーと子どもを支援する団体を選んで寄付につなげる紹介サイト