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多発する災害、政治に求めることは? 能登支援の支援団体代表に聞く

2024.10.11
 「50年に1度」級の災害が毎年のように起きる昨今。青森市の一般社団法人「男女共同参画地域みらいねっと」は、1月に最大震度7の地震に見舞われた石川県能登半島の被災地で支援活動を続けている。15日に公示される衆院選を前に、被災地支援の経験が豊富な同法人代表理事の小山内(おさない)世喜子さん(66)に、政治に求めることを聞いた。
 ――能登半島の被災地ではどんな支援活動を行っているのですか。
 穴水町を中心に、輪島市や七尾市でも避難所の運営をサポートしてきました。段ボールベッドや簡易トイレの整備などを手伝いました。豪雨災害前の9月中旬までに8回、被災地を訪れています。地震の直後からすると、生活が少しずつ落ち着いてきたような感じがしていました。
 ――そんな矢先の9月下旬に豪雨災害が発生し、地震被災者の仮設住宅も被害を受けました。
 現地の人たちの顔が頭に浮かびました。7月末に輪島へ行ったとき、地震で被災した女性が「あのとき死ねばよかったと思ったことがあった」と涙ながらに話されました。それでも前を向いて立ち上がろうとしていた矢先の大雨です。なんとかがんばってきた人たちの心が折れ、古里を離れる人が増えるのではと懸念しています。
 ――近年は被災地でのボランティア活動がすっかり定着しました。不安な点はありますか?
 被災地で災害支援活動の指揮や調整などをしている団体は、寄付や助成金で運営されている場合が多く、資金面では十分とはいえません。ボランティアが活動するには、現地での滞在拠点や活動するための物資が必要です。
 災害支援=すべて無償活動ではないのです。社会全体でボランティア活動に対する考え方を変えていかないといけない。政治には、NPOなどの災害支援団体が安心して活動できる財政支援などの仕組みづくりを、後押ししてほしい。
 ――充実したイタリアの避難所が話題になりました。海外との違いは?
 日本では市区町村が避難所運営の主体になっているので、避難所の運営や支援物資の備蓄についての考え方がそれぞれ異なり、自治体の財政力によっても事前の備えには差があります。
 イタリアには防災分野を担う専門の省庁があり、国レベルで防災対策や災害支援の標準化が進んでいます。自治体の財政力にかかわらず、住民の命や生活を守ることに重きが置かれ、避難所となる施設には台所、ベッドなどが配置されます。政治にはすべての自治体が平等に、充実した備えを進められるようお願いしたい。
 ――他に政治に求めたいことはありますか。
 人材育成への支援と、生活者に焦点を当てたサポートです。災害が起きたら避難所の開設や運営、炊き出しなどに多くの人手が要ります。平時から、いざというときに行動できる人材を育てないといけません。
 人材育成はすぐには結果につながらず、後回しにされがちです。人材育成の重要性を広く理解してもらい、国を挙げて取り組みを進めてほしい。その際には女性の視点も意識する必要があります。男女で生活に必要な備品が違い、トイレや更衣室など生活空間を分ける必要もある。事前防災や避難所運営には女性の力が欠かせないのです。
 ――石破茂首相は「防災庁」を2026年度中に創設する考えです。
 内閣府に防災担当を置く今の体制では、数年ごとに職員が異動し、専門性や業務の継続性に課題がありました。自治体職員や民間団体などとの関係性もなかなか深まりません。防災庁ができて迅速に動けるようになるなら賛成です。
 ただ、焦ってつくらない方がいい。時期も大事ですが、中身が伴わないと意味がない。民間と対等な関係で、いざというときに連携して力を発揮できる組織にしてほしい。政治家と官僚たちだけでつくるのではなく、被災地やそこで活動する人たちの声をすくい上げてほしいです。(聞き手・野田佑介)
 〈おさない・せきこ〉宮城県出身。2017年、一般社団法人「男女共同参画地域みらいねっと」を設立し、男女共同参画の視点を採り入れた避難所の運営訓練や、女性の防災リーダー育成などに取り組む。東日本大震災の際、青森県や宮城県で被災者支援活動を行った。