スペシャルインタビュー

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【井上咲楽さん】気軽に楽しく取り組める、暮らしの中のSDGs

掲載日:2025.03.06

タレントの井上咲楽さんは、日々の暮らしの中で、楽しみながらサステナブルな取り組みを実践しています。その原点は、子どもの頃から親しんできた実家のライフスタイルにあるそうです。また、マラソンやトレイルランニングに挑戦し続ける井上さんは、大会に欠かせないのがボランティアの存在だと実感しています。そんな井上さんに、地球にいいことを自然体で続けるコツやボランティアへの想いを聞きました。

実家の「当たり前」には、地球にいいことがたくさんあった

――ご実家の日常には、環境にやさしい取り組みがたくさんあったそうですね。

栃木県益子町の実家は山の中にある一軒家で、お風呂もストーブも薪で焚いています。両親と4人姉妹の6人家族で、自然に囲まれながら育ちました。牛乳パックをまな板代わりに使ったり、壊れても使えるものは自分たちで直したり。使い捨てをほとんどしない家ですね。

例えば、着られなくなったTシャツや使い古したタオルは、食器の油汚れを拭くのに使います。排水管が汚れると、平地にある住宅に比べて詰まりやすい。修理のために業者に来てもらうとお金もかかるので、両親からは「油汚れは水道に流さないように」と、注意されていました。

――子どもの頃から、ごみをしっかり分別していたそうですね。

紙などの資源ごみを分けたり、生ごみはコンポストに入れて堆肥にしたり。子どもながらに、ごみはなるべく出さないようにしていました。朝のごみ出しは子どもの日課で、山の下にあるごみ置き場まで5分かかります。ランドセルを背負いながら、大きなごみ袋を運ぶのは結構大変で。「地球のために」というよりは、「自分の仕事」を少しでも楽にしたかったのが一番の理由です。

いろいろ振り返ってみると、どれも最初から「地球のために」と思ってやっていたわけではない。むしろ「楽だから」「節約できるから」という理由で日ごろからやっていたことばかりです。でも、そんな小さなことの積み重ねが、知らず知らずのうちに地球にいいことになっていたんだなと思います。

栃木県益子町の山の中にある井上咲楽さんの実家(井上さんご提供)

――そんなご実家での暮らしを、子どもの頃はどう感じていましたか?

実家の周りには他の家やお店もなく、とても不便でした。子どもの頃は都会のマンションに憧れていましたね。でも、上京して実家での生活の話をすると、周りの人には新鮮に映るようで。実家での生活は、東京での生活でも意識しており、両親にはとても感謝しています。実家は心がとても落ち着く場所なので、月に1度は帰省しています。

サステナブルな生活を続ける秘訣は「楽しさ」 

――ご自身が続けているサステナブルなことを教えてください。

最近始めたのは、使い終わったコンタクトレンズのケースをリサイクルに出すこと。私は1DAYのコンタクトを使っているので、どうしても空のケースが毎日出てしまいます。コンタクトのお店に回収ボックスが置いてあるので、ケースをかわいい缶の中に入れておいて、まとめて持って行くようになりました。缶の中がいっぱいになると、「うわぁ、こんなにたまった!」という達成感があって結構楽しいんです。

普段は、食材を包むのに布製の蜜蝋ラップを使っています。市販もされていますが、普段使いには少し高くて。だから、私は蜜蝋だけ買って手作りしています。アイロンさえあれば、誰でも簡単に作れますよ。あとは、お椀をレンジで温めるときは、上から平皿をかぶせてラップを使わないようにしています。

他には、家電を買い替える時は中古品をまずはチェックしてみたり、調味料を選ぶときはペットボトルのものではなく、ビンに入ったものを選んだりしています。

――「古着deワクチン」というサービスもよく使われているそうですね。

いらなくなった服を送ると、服は発展途上国に届けられて、さらに子どもたちにポリオワクチンを贈ることができるんです。私が着る服は結構個性的で、妹たちに譲ろうとしても喜ばれないし、フリマアプリでもなかなか売れなくて。でも、思い入れのある服なので絶対に捨てたくない。そんなときに「古着deワクチン」のことを知りました。専用の回収キットが届くので、そこに服をまとめて入れるだけ。とても手軽です。

私もそうですが、物を捨てられない人って多いですよね。でも、簡単に捨てられないということは、それだけ思い入れがあるということ。大切な服があるって、とても素敵だと思うんです。環境のことだけを考えれば、同じ服を着続けることが一番だけど、やっぱりファッションは楽しみたい。大事なのは、自分が大切だと思える服を選ぶことだと思うんです。私が買い物で意識しているのは「どうしても持って帰りたい」と思える服かどうか。それでも迷ったら「倍の値段でも買いたい?」と自問しています。

――海岸や河川敷のごみを拾うイベントにも参加されていますね。

制限時間内に拾ったごみの量やごみの種類でポイントを競うイベントに参加しました。チーム対抗戦ということもあって、特に子どもたちはゲーム感覚で楽しんでいましたね。もちろん、ごみが落ちているのは残念なことですが、イベントを通じて、意識しなければ通り過ぎてしまうような場所に、意外なごみが落ちていることに気づきました。一番驚いたのは、細かいプラスチックごみが多いということです。拾いにくいので回収が難しく、放置されやすい。だから、大きなごみよりも深刻な問題なのだと分かりました。

ボランティアは「命綱」のような存在

トレイルランニングの練習をする井上咲楽さん(井上さん提供)

――マラソン大会にも出場し、ボランティアと触れ合うことも多いそうですね。

私にとって、ランニングは歯磨きと同じくらい日常の一部。マラソンやトレイルランニングの大会に参加するたびに、安心して楽しめるのはボランティアの皆さんのおかげだと実感しています。大会は寒い時期に開催されることが多いですが、私たちは走っているので寒さを感じにくい。でも、ボランティアの方々は朝早くから準備し、レース中も外で立ちっぱなし。ランナーにとって命綱のような存在で、本当に感謝しています。

トレランの大会では、ランナーがエイドステーションで水分や栄養を補給し、休憩できます。ボランティアの方々が「これも持っていきなよ」と、甘い物を持たせてくれたり、励ましてくれたりするんですよ。走り終わった後も「これ食べて!」「唐揚げもあるよ!」と美味しいものをたくさん勧めてくれて。優しい方が多いですね。

小さな行動が、たくさんの発見につながる

――社会や地球のために何かをやってみたくても、行動に移せない人も多いと思います。一歩踏み出すためのコツや長く続けるためのコツを教えてください。

社会や地球のためだけでなく、自分にもメリットがあるということを見つけるといいと思います。「古着deワクチン」の利用には、有料の回収キットが必要ですが、クリーニングに出したり、きれいに梱包しなくてもキットに服を詰めて送るだけで人の役に立つことができる。「お金がかかる」ではなく「手間が省ける」と捉えれば、自分にとってのメリットが見えてきて、続けやすくなります。

もう一つ大切なのは、良い意味で「自分ひとりにできることには限りがある」と割り切ること。ついつい「大したことはできない」と考えがちですが、そもそも一人でできることは地球規模で見たら米粒ぐらいだと思うんです。それに、労力がかかることは長続きしません。コンタクトの空ケースをためておくことも、一つひとつはすごく小さいけれど、毎日続ければ大きな量になります。「大層なことをしなきゃ」とプレッシャーをかけず、簡単にできることを積み重ねていけば、結果的に大きなことにつながるはずです。

――ボランティアも社会貢献も、まずは行動に移すことが大切なんですね。

行動に移すことで、感じられることや心動かされることがあると思います。ごみの問題を知識として知っていても、実際に河川敷や海岸のごみ拾いに参加して、初めて分かる発見がたくさんあります。かつて産業廃棄物が不法投棄された香川県の豊島を訪れたときも、そうでした。島の空気を吸い、島民の方々に当時の話を聴かせてもらうと心が動かされます。気になることがあれば、まずは現場に行って、体験してみるのはいかがでしょうか。