スペシャルインタビュー

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【安藤なつさん】子どもの頃に始めた介護のボランティア「介護ってこんなに楽しい」

掲載日:2023.08.23

中学生の頃から介護の世界に携わってきたという、お笑いコンビ・メイプル超合金の安藤なつさん。ボランティアとしての関わりをはじめ、長年介護に携わる大ベテランです。お笑い芸人として活動しながら介護に関わる安藤さんに、介護ボランティアの楽しさについてお聞きしました。

介護の世界への入り口は身近なところに

―安藤さんが介護に携わるようになったきっかけを教えてください。

自分が7歳の頃に、伯父が自宅を改装して小規模な介護施設を始めたんです。当時は脳性まひの方と自閉症の方、認知症の高齢者の方がそこで暮らしていて、伯父の家に遊びに行ったときはいつもその3人とスタッフさんと一緒に公園に行ったり、おやつを食べたりしていました。みんなで遊ぶのが楽しくて、小学4年生くらいの頃からちょくちょく顔を出すようになりました。

中学生になると、遊びに行く感覚でボランティアをするようになりました。毎週土曜日に泊まりに行って、日曜日のお昼過ぎに自宅に帰るスケジュールで、スタッフさんにいろいろ教わりながら3年間続けましたね。施設に着くとちょうどみんなおやつの時間だから、食事介助をして、水分補給もして。夜はお風呂の介助もしていました。

―ボランティアを始めて、大変だなと感じることはありましたか?

介護は大変だというイメージを持たれる方も多いとは思いますが、自分の場合は小学生の頃に体験した楽しいイメージのまま、何の先入観もなく現場に入ったので、大変だと感じたことはなかったです。夏休みにみんなでバーベキューや旅行をしたことも含めて、楽しい思い出しかありません。

―ボランティアを長く続けた理由は、「楽しかったから」なんですね。

利用者の方は十人十色で、誰にでも当てはまる「こんなときはこうすればいい」という正解がないのも、介護を楽しいと感じた理由です。同じように対応しても「この人にはこのやり方では通用しなかったな」ということもあります。パターンに当てはめるのではなく、相手がどうしたら喜んでくれるか、心地よさを感じてくれるかを考えながら、自分と利用者さんの関係性に合ったやり方を見つけていくのは、介護の現場ならではのおもしろさです。達成感もあるし、何より、相手が嬉しいと自分も嬉しいじゃないですか。長く続けた理由は、それに尽きると思います。

「介護」で知った心の通じ合い、自身の成長

―介護ボランティアで、印象に残っていることはありますか?

「介護が好きかもしれない」と感じた瞬間は、今でも鮮明に覚えています。日曜の朝は、伯父の施設で認知症のおばあちゃんの着替えを任されていたんですけど、何度粘ってもなかなか着替えてくれなくて。おばあちゃんのズボンを下げてちょっと目を離したすきに、また穿いていたりして、「あ、今週もダメだった」というのが何週も続きました。でもある日、パッと着替えてくれたんです。やっと自分を受け入れてもらえたように感じた、すごく印象深いできごとでした。あれから30年近く経ちますが、いまだにその方のお名前は覚えています。

―介護ボランティアとして、他にはどんな経験がありましたか。

気持ちが高ぶってしまってうまく眠れない方がいたので、土曜の夜は毎週手をつないで添い寝をしていましたね。ギューッと腕をひねられたり、全く寝てくれなかったりで、根負けしそうになることもありましたが、あきらめずに「絶対一緒に寝てやるぞ!」という気持ちで向き合いました。そのうち慣れてくれたのか、安心して眠ってくれるようになったのはすごく嬉しかったです。利用者さんと根っこから関われたと感じられる瞬間は、何ものにも代えがたいなって思います。

スタッフさんたちを見ていると、みなさん利用者さんとしっかり向き合っているんですよね。例えば自閉症でこだわりが強い方に対しても、その方がなんでそれにこだわるのか、そのこだわりをどうやったら日常生活を送る上でも支障がないようにしていけるのか、相手とちゃんと話す。答えが一つじゃない中、問題や課題を放置しないで、クリアしていくんです。

―スタッフさんの働く姿勢からも、学ぶものがあったと。

ケアの心構えというか、正面から逃げずに向き合う大切さを学びました。あのとき、自分が受け入れてもらえた理由はなんだったんだろうって振り返りも、よくやっていましたね。相手との関係性も向き合い方もずっと一定じゃなくて、毎日新しい発見がある。介護は奥が深いです。

怖がらなくて大丈夫。気軽にまずは行ってみて

―介護・福祉ボランティアに興味を持ったら、何から始めてみるといいでしょうか。

まずは住んでいる地域の福祉施設や介護施設でボランティアを募集していないか、インターネットで検索してみるといいと思います。夏祭りとか季節の行事のお手伝いとか、イベント系のボランティアは割と頻繁に募集しています。そこにサラッと参加してみるといいんじゃないですかね。

参加の動機は、「ちょっと興味があるから」で十分です。利用者さんと接する上で、何か相手の命に関わるような大変なことをしでかしてしまったらどうしようとか、そんな心配はしなくて大丈夫です。だって、ボランティアですよ。施設側も、利用者さんとボランティアさんの双方が安心してコミュニケーションをとれるようなことをお願いすると思います。「このおばあちゃんとお話ししてくださいね」って頼まれたら、その方と楽しくお話しするだけでいいんです。

施設側はボランティアさんに来てほしいし、ボランティアに参加する側は介護に興味がある。めちゃくちゃ需要と供給がマッチしているので、不安に思わずに、気軽にプラッと遊びに行く感覚で行ってみてください。

―どんな方に介護・福祉ボランティアに参加して欲しいですか?

介護に少しでも興味があったらどなたでも参加してほしいです。

自分としては、人付き合いに疲れた人にも参加してみてほしいです。福祉の現場は、ストレートな気持ちのやりとりができる場所です。利用者さんは生きていくこと、生活することに一生懸命で、嬉しいときは100%で嬉しいし、嫌なことは100%で嫌がる。感情が直球で、そこに一切の邪念がないんです。人間としての魅力があふれています。

「おいしくごはんが食べられた。嬉しい」。そんなシンプルな感情の共有が、自分はとても好きなんです。利用者のおばあちゃんと、「おまえはでっけぇなぁ」「(相撲の)今場所はがんばりたいんすよ~笑」なんてやりとりをして、かわいがってもらっている時間も幸せですね。

介護・福祉ボランティアは本当にオススメなので、ぜひ一度参加してみてください。もし不安だったら、自分も一緒について行くんで!