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誰もがHappyな社会を目指す【東京レインボープライドのボランティア】

掲載日:2025.02.28

2日間のイベントで、のべ27万人が来場した「東京レインボープライド2024」。アジア最大級のLGBTQ+のイベントで、会場の代々木公園をはじめ、公園周辺を歩くパレードなどたくさんの人でにぎわいを見せました。

この華やかなイベントを支えているのが、実は約600人のボランティア。10代~60代以上までの幅広い年代が参加し、国籍やルーツも様々。ボランティアの魅力ややりがいは何なのでしょうか。2人のボランティア活動に密着しました。

30周年を迎えたLGBTQ+の祭典、600人のボランティアがサポート

2024年4月20日と21日。春風が吹き抜ける代々木公園で、東京レインボープライド(以下TRP)が開催されました。

公園内には200以上の飲食・物販・体験型ブースがずらりと並び、海外の方も含めて大勢の人でにぎわっています。

TRPのメイン会場にはブースがずらりと並びます

日本で初めて「プライドパレード」が開催されたのは1994年。今より厳しい社会状況の中で運営の難しさや中断などもありながら、2012年に、現在のイベントの前身となる東京レインボープライドが開催されました。以来、コロナ禍のオンライン開催を挟みながら、毎年開催されています。

2012年にはおよそ4,500人の動員数だったのが、2024年はなんと27万人に。2024年のテーマは「変わるまで、あきらめない」。性のあり方に関わらず、誰もが自分らしく前向きに、誇らしく生きていくことができる社会の実現を目指して開催されています。

プライドパレードは渋谷、原宿の街を歩きます

プライドパレード中のボランティア

「ひとりでも多くの方に喜んでもらえたら」

TRPを象徴するのがプライドパレード。代々木公園をスタートして、渋谷の公園通りや原宿の明治通りを歩き、また公園に戻ってくる約2kmのコースです。イベント最終日の午後に、当事者団体をはじめとする非営利団体や、大使館、企業などおよそ60団体(各250名程度)が順に歩きます。2024年のパレードには過去最高の15,000人が参加したということです。

そのパレードを支えているのが、パレードセクションのボランティア約300名。パレード前日と当日の受付、参加者へのガイダンス、パレード中の誘導や安全管理が主な役割です。パレード中は沿道からも大勢の人が手を振ったり声を掛けたり、笑顔にあふれた光景が広がります。

この幸せに包まれた空気に魅了され、何度もパレードセクションのボランティアをする人も多いといいます。今回、話を聞いたゆうきさんもその1人。ボランティアとしては5回目の参加です。

パレードセクションのボランティア・ゆうきさん

ゆうきさんは福島県在住ですが、毎年TRPに参加することをとても楽しみにしています。年に1回のTRPが同窓会のようになっていて、とても居心地がいいそうです。

パレードのボランティアは、基本的には3人1組のチームで団体の誘導を行います。ゆうきさんは2団体のパレードを誘導するチームのリーダー。パレードの参加者には子どももいます。暑い時間帯に1時間近く歩くために、ゆうきさんはなるべく側で気遣い、声を掛けていました。

「自分が一番楽しむ!という気持ちでいれば、周りもなんだか楽しいと思って喜んでくれるかな」と言うゆうきさん。

同じチームのななみさんも、リーダーのゆうきさんのおかげで、楽しんで参加できたと言います。「ボランティア自体が初めてでしたが、事前にパレード中の沿道の方との接し方を教えてもらったため、安心してパレードに臨めました。やりがいがあって、いろいろな方とコミュニケーションが取れたことがうれしくて、またボランティアしたいです」

チームワーク抜群のボランティアの3人。右端がななみさん

ゆうきさんはボランティアが初めての方でも大丈夫だと言います。「僕も最初は不安だったけど、ボランティアのみんながとても優しいから大丈夫でした。決められた役割以外にも、みんな自発的に動いたり声掛けをしたり、すごいなあと感心してしまいます。苦手なことがあっても、誰かがすぐにカバーしてくれる、そういう安心感があります」

ゆうきさんはTRPに参加して、視野が広がり、いろんな立場に立って物事を考えられるようになったといいます。「毎年、こんな方もいるんだ、こういう生き方もあるんだ、と知ることがたくさんあります。否定からではなく、『それもいいよね』と思える自分でいることが大切な気がします。TRPはいろいろなバックグラウンドの人が集まっているから、スタッフさんもボランティアも、お互いのことを気づかい、思いやりのある優しい言葉であふれているんです。そこは他のイベントにはなかなかない素敵なところだなと感じています」

左右を見渡し、声を出しながらパレードを誘導するゆうきさん

「たくさんの価値観に触れ、心が豊かに」

総合受付セクションのボランティア・ぴろさん

総合受付セクションで、にこやかに来場者に会場の説明をしたり、パンフレットを渡したりしていたのは、ぴろさん。

日本語だけでなく、英語を巧みに操る様子も印象的です。外国語や手話など、それぞれの特技を持ったボランティアがたくさんいるのも、TRPの特長の1つ。

「総合受付にはいろいろな方が来るので、たくさんコミュニケーションが取れて楽しいです。英語のスキルも生かせるのが魅力的です」と話すぴろさんもTRPのボランティアは4回目。

はじめは来場者として訪れたというぴろさん。TRPのみんなから祝福されるような優しい雰囲気を魅力に感じ、参加者としてだけではなく、イベントを一緒に創り上げてみたいとTRPのボランティアを始めました。

総合受付セクションで来場者へ案内するぴろさん

「総合受付は、来場者への案内からクローク管理や迷子対応まで幅広く、柔軟な対応が必要ですが、感謝される場面も一番多いと思います。総合受付のメンバーは1か所に固まっているので、和気あいあいと活動できるのも魅力です」

「TRPのボランティアでは、いろいろな価値観に触れる機会が多いですし、みなさん根底には社会貢献したいという共通意識を持っています。そのためか、みなさんとても優しいです。学生もいれば年輩の方もいます。サポートもありますし、初めてボランティアにチャレンジする環境としてはすごくいいと思います」

学生時代はボランティアサークルに入り、海外のプライドパレードでのボランティア経験もあるぴろさん。いろいろな人に出会えることで、心の豊かさ、ひいては人生の豊かさにつながっているといいます。今ではボランティアは、家や仕事とは別のもうひとつの居場所となり、ぴろさんにとってアイデンティティの一部になっているそうです。

総合受付を担当したこぼチャンさん(左)とぴろさん

ぴろさんの隣で総合受付を担当していたこぼチャンさんも、「これまで、スポーツボランティアなどいろいろなボランティアに参加していましたが、TRPのボランティアは初めてです。いろいろな方と接する機会を楽しみに総合受付に応募しました。TRPに参加することで、ダイバーシティや多様性という言葉を自分でもちゃんと理解したいと思っています」と教えてくれました。

新たな出会いが、新しい価値観を生む

主催者である特定非営利活動法人東京レインボープライドのボランティア統括チーム リーダーの吉田夏海(なつみ)さんも、大学時代にパレードセクションのボランティアとして参加し、人々の晴れやかな姿に魅せられた一人。当日も、学生や20代と思われる年代のボランティアがたくさん活動していました。聞くと、20代のボランティアが最も多いのだそうです。

2024年のTRPのボランティアの活動セクションは8つ。前述の「パレード」「総合受付」のほかに、「ステージ」「物販」「TRPサポーター」「アンケート」「会場」「救護」のセクションがあります。「パレード」のボランティアが約300名と一番多く、他のセクションは各30~50名ほどだそうです。
(*2025年の募集セクションや人数につきましては、下記募集情報のリンクをご覧ください)

特定非営利活動法人 東京レインボープライドの吉田夏海さん

2024年のTRPのボランティアに初参加した人の割合は7割ほど。TRPに来たことがある人や、LGBTQ+を取り巻く課題などに関心のある人、SNSで募集を見かけた人など様々な方が新たに参加しました。リピーターの人、初参加の人、みんな和気あいあいとしてリラックスしている様子が印象的です。

まずはボランティア説明会に参加してみてほしいとなつみさんは言います。「それぞれのセクションの説明をするので、やってみたいセクションを選んでください。なるべく希望通りのセクションになるように調整しています。どのセクションでもOKという方も大歓迎です」

毎年イベント開催が近づくと、ボランティア参加者を集めた全体集会が開催されます。「全体集会ではセクション別のミーティングもあり、不安なことを聞いたり、希望に応じてチームの人と連絡先を交換したりすることができます。2024年は渋谷区の会場とZoom配信のハイブリッドで開催し、会場には200人ぐらいの人が来てくれました。全体集会に来ると、より安心してイベントに臨めるかと思います」

全体集会では緊張していたボランティアも、イベントを通してすっかり打ち解けてしまうようです。一人ひとりが心から楽しめるのも、ボランティア同士のコミュニケーションがうまくいっているからこそ。会場を歩くなつみさんも、たくさんのボランティアと楽しそうに会話をしていました。

終了後のアンケートで、「来年もボランティアとして参加したい・どちらかというと参加したい」と回答した人は、驚異の94%。ボランティア同士だけでなく、スタッフとボランティアの距離が近く、信頼関係ができているのも高い満足度の要因の1つです。

なつみさんにTRPのボランティアならではの魅力を改めて伺いました。

「学校や職場などは、自分に似たような考えを持った人が多くなりがちですが、TRPにはいろいろな人がいて、お互いを認め合っています。ボランティアに参加する中で、新たな出会いがあり、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)を崩されるような経験を、大なり小なり経験すると思います。

みんなが自分らしくいること、それを尊重することが、イベント全体を温かく優しい雰囲気で包んでいます。それが誰もが『らしく、たのしく、ほこらしく』生きられる社会にもつながっていくと思います。

2025年、代々木公園でのTokyo Pride Parade & Festivalは6月7~8日の2日間開催します。ボランティア登録は3月1日から4月30日までです。

ボランティアに参加すると、新しい世界が広がり、心が豊かになる経験に出会えると思います。初めての方も、自分らしくありのままで来てもらえれば大丈夫です。思い切って飛び込んでみてください。参加してくれる皆さんに不安のないよう、チームとしてしっかりサポートしていきます」