ボランティアはじめの一歩
ボランティアをしてみたいけど、どうしたらいいかわからないという方も多いのではないでしょうか。そんな方におすすめの、1人でも友達同士でも気軽に参加できるボランティアや、学校の仲間と始められるボランティアを紹介します。
地域の防犯にもつながる「パトラン」でのゴミ拾いを始めた昭和第一学園高校と、手ぶらで気軽に参加できるゴミ拾いを全国で行っている「greenbird(グリーンバード)」の渋谷チームに密着しました。
あいさつから地域とのつながりが深まる、パトランの「星くずひろい」
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昭和第一学園のパトラン中の様子
東京・立川市にある昭和第一学園高校。2024年から課外活動としてパトランを始めました。パトランとは、「防犯パトロール」と「ランニング」を掛け合わせた造語。ランニングだけでなく、ウォーキングでもOK。その場合は、ゴミを星くずに例えた「星くずひろい」をしながら、すれ違う人にあいさつをします。
昭和第一学園のパトランは、主にウォーキングしながら「星くずひろい」をするスタイル。地域の方へのあいさつも欠かさず、地域の方との交流が生まれています。
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パトランで学校周辺の美化に貢献
この昭和第一学園のパトランの発起人は、本吉広和(もとよし・ひろかず)先生。生徒たちに気軽なボランティアを体験させたいと思っていたところ、偶然パトランを知り、「これだ!」と思って「パトラン東京」に連絡したのが始まりでした。
冬休みに入ったばかりの朝9時。11人の生徒が学校に集まりました。参加のきっかけは、本吉先生が作成した「参加者募集のポスター」を見たからという生徒がほとんど。学年もクラスもバラバラで、1人で来た生徒も、友達と誘い合って来た生徒もいました。ほとんどが初参加ということです。
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冬休みの朝、自主的に参加した生徒が集まります
まずは、本吉先生から活動の心構えについて説明があります。「普段地域の方々にバス通学などで迷惑をかけているので、その分地域の方々に恩返しできるといいよね!」と明るく生徒たちを送り出します。
2つのチームに分かれた後は自己紹介をします。というのも、生徒数が多い学校のため、ほとんどが初対面なんだとか。学校を出発し、道端や側溝に落ちている星くずをひろううちに、自然とコミュニケーションが生まれていきます。
車が通ったり通行の妨げになりそうな時は、お互いに声を掛け合っている様子が印象的。近所の方と笑顔で挨拶をしたり、公園では保育園児と手を振りあったり、地域の方とのコミュニケーションが生まれていくのも素敵な光景です。
活動は1時間ほどで終了です。終了後は、一人一言感想を共有する「振り返り」の時間。「早起きをして、いいことをして気持ちがよかった」「地域の方があいさつをしてくれてうれしかった」「思ったよりも星くずがたくさんあることに驚いた」など、それぞれの視点で感想を言い合います。
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星くずひろい後には参加者で振り返りを行います
初参加の2年生の2人は「普段会わない初対面のメンバーで活動できたのが楽しかった」「ボランティアというと気構えてしまう人も多いと思うけど、実際参加してみたらやりがいもあって、仲間も増えて楽しかった。また参加してみたい」と振り返ります。
2回目の参加の3年生は、今回は友達を誘って参加したということです。「パトランをやってみて、普段よりもさらに道端のゴミに目が行くようになり、早くゴミを見つけて拾えるようになった」と教えてくれました。
2024年の春から始まったパトランは今回で8回目。延べ100人ほどの生徒が参加してきました。本吉先生の「社会と関わるような経験をさせたい」という思いは、広がりを見せています。
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昭和第一学園の本吉広和先生
「パトラン東京の渡部代表に、最初は少人数でやった方がいいとアドバイスをもらい、まずは生徒会の8名でやってみました。普段はほとんど交流のない地域の方々にあいさつをしてみると、返事が返ってきたり、ありがとうと言われたりして、それが思った以上にうれしかったようで。生徒たちが活動をポジティブに受け止めてくれて、手ごたえがありました」
それからは、手作りのポスターで全校生徒に対して募集しています。「自分が普段関わりのない子たちもたくさん参加してくれて、自主的に参加してくれるのがうれしい」ということです。
この「自主性」が、大学入試の総合型選抜でも重視されるのだとか。そのため、パトランに自主的に参加してくれた生徒たちには、自分自身についてポジティブな気づきを持ってもらえるように、個性を引き出せるようなコミュニケーションを心がけているのだそうです。
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生徒たちのパトランは、地域と学校をつなぎます
「ちょっとしたことが誰かのためになる。パトランを通して、生徒たちにも体感してほしい」と話す本吉先生は、今後も定期的に活動を続けながら、部活ごとにパトランを行うなど、学校全体にも広げていくことを目指しています。
手ぶらで気軽に、カッコよく。誰でも参加できるグリーンバードのゴミ拾い
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グリーンバード渋谷チームのゴミ拾い活動中の様子
2024年11月の日曜日のある朝、グリーンバード渋谷チームのゴミ拾いに、20人ほどのメンバーが渋谷の街に集まっています。
この輪の中心にいるのは、渋谷チーム運営メンバーの高校1年生の佐藤さんと、高校2年生の二宮さん。渋谷チームは、学生の運営メンバーを中心に動いているのだそうです。
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運営メンバーの高校生・佐藤さん(左)と二宮さん
高校生の2人は率先して参加者をまとめていきます。この日は初参加の方が多かったため、佐藤さんと二宮さんは点呼を取ったり、当日の流れや注意事項を伝えたり、全員が集まるまでの時間に「初めての参加ですか?」など笑顔で話しかけ、場の雰囲気を和らげていました。
参加者がグリーンバードのビブスを着たら、活動スタート。この日は主にタバコの吸い殻を拾うことを目的にした活動で、約1時間かけて渋谷のスクランブル交差点付近から原宿方面の公園まで歩きます。
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参加者は協力しあって街の美化に貢献します
参加者は、親子連れや友達同士、留学生や社会人などさまざまですが、コミュニケーションを取りながら、協力してゴミを拾っていきます。
運営メンバーの佐藤さんと二宮さんは、全員の様子を見ながら道案内役となり、ゴール地点まで誘導していきます。そして、約1時間で拾ったタバコの吸い殻の総数は、なんと2217本──。参加者たちはその数に驚きつつも、その顔は充実感に満ちています。
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どのくらいのタバコの吸い殻を拾ったか振り返ります
ボランティアに参加した理由を聞いてみると、「午後に渋谷で予定があるので、その前にゴミ拾いをしようと思って」という学生の友人同士や、「いろいろな人に出会えるのが面白いから」という社会人など、さまざまな思いで集まっています。
親子3人で参加した佐々木さん一家は、お父さんが以前ほかの地域のグリーンバードの活動に参加したことがあり、今回は家族を誘って参加。ボランティア初参加の中学生の娘さんは、「想像以上にゴミがたくさんあって、こんなに拾えるとは思わなかったです。渋谷をいつもと違う視点で歩けて面白かった」と笑顔で話します。
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佐々木さんご家族も活動後は充実の笑顔
運営メンバーの佐藤さんは、中学1年生のときにグリーンバードの活動に参加したのがきっかけ。今の運営メンバーも同世代が多く、学校以外にもたくさんの友達ができるのも魅力のようです。
「SDGsについて熱心に教えてくれた先生の影響が大きくて。世界をより良くしたい、そのために何ができるだろうと考えて、身近ですぐにできるゴミ拾いを小学6年生のときに始めました。中学生になりグリーンバードに参加し、いろいろな方と交流しながらゴミ拾いをできるのが楽しいですし、街をキレイにできる達成感もあります」と話す佐藤さん。活動中も笑顔で参加者を気遣い、ボランティアの楽しさを体現しています。
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運営メンバーの佐藤さんと二宮さん
高校2年生の二宮さんは、渋谷の街が好きなのと、都市開発に興味があり、この活動を始めました。「ゴミ拾いは街づくりに関係していると思い、グリーンバードの活動に参加しました。街のキレイさは犯罪率にもつながる大事なポイントだと思います」と、活動を始めてから、より街への思いが深まっているそうです。
「ボランティアは真面目な人がやることという先入観を払拭したくて。ボランティアは気軽にできる楽しいイベントだと同世代にもっと知ってほしいです。楽しいと行動したくなりますし、参加するハードルも下がるので。まずは僕自身が活動を楽しんでいる気持ちを前面に出したいと思っています」と意気込みを教えてくれました。
最近、二宮さんがグリーンバードで活動していることを「すごいね」ではなくて「楽しそう!」と言ってくれる友達も増えているそう。ボランティアの楽しさはどんどん広がりを見せています。
はじめるのは簡単。一歩を踏み出そう
今回ご紹介した昭和第一学園のパトランの立ち上げに関わっている「パトラン東京」代表の渡部信隆(わたなべ・のぶたか)さんと、グリーンバード渋谷チームのリーダー澤登公孝(さわのぼり・きみたか)さんに、それぞれの活動のことを聞きました。
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パトラン東京代表の渡部信隆さん
「パトラン東京では、昭和第一学園以外の学校でのパトランもサポートしています。学校ごとに、どのようなパトランにしていきたいのか、それぞれの方針や考え方を聞きながら、最適な方法をご提案しています」という渡部さん。最初はパトラン東京が「体験パトラン」も開催してくれるため、いろいろなことを相談しながら体験し、それぞれに合ったパトランの活動を作り上げることができるのも魅力です。
学校として始めなくても、都内7地域で開催している定例パトランに、1人でも友達同士でも気軽に参加することができます。
「定例パトランのスケジュール・申し込みフォームや、お問い合わせフォームはHPにあるので、気になる方は一度HPをのぞいて見てみてください。気軽に参加してもらえるとうれしいです」という渡部さん。
「それぞれの地域を一番知っているのはその地域に住んでいる方なので、パトランは誰もが主体になれる活動」と渡部さんが話すように、住んでいる街や通学している地域をより良い場所にしていきたいという思いも、やりがいにつながるようです。
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グリーンバード渋谷チームのリーダー・澤登公孝さん
全国各地に70チームあるグリーンバードは、「きれいな街は、人の心もきれいにする」をコンセプトに、誰でも自由に参加できるのが特長。中学生から高校生、大学生、専門学校生、留学生など多くの学生が参加しています。
澤登さんが渋谷チームのリーダーになったのは2016年。学生や外国人観光客、そして企業も活動に加わり、ここ数年でも「渋谷の街はキレイになってきた」と話します。
その中で、澤登さんをはじめ、学生の運営メンバーが力を入れているのが、ゴミ拾いを“楽しいイベントにする”企画。例えば、学生だけでゴミ拾いを行うイベントや、ゴミ拾い中に英語だけで会話するイベントなど、ゴミ拾い以外の魅力もたくさんあります。
このような企画は、運営メンバーの学生や参加者の学生からの企画も多いそうです。「『こんなことをやりたい』と言ってくれる学生が多くて。これからも、学生が中心にいるチームを作り、学生が学生を呼んでくる組織、そして若い力を応援したいという大人が集まってくるような組織を作っていきたいと思っています」と澤登さんは力を込めて話します。
パトランも、グリーンバードのゴミ拾いも、学生が気軽に参加しやすい活動です。1人で、友達同士で、学校単位で。それぞれに合った形で、身近なところから“はじめの一歩”を踏み出してみるのはいかがでしょうか。