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高齢者の健康、密着し支え コミュニティーナース巡回 問題発生前に

2024.12.10
 健康に問題が起きる前から高齢者を助ける「アウトリーチ」活動が、過疎が進む栃木県北部などで始まっている。看護師や管理栄養士が、独自の支援のあり方を模索している。(重政紀元)
 「腰の様子はどう?」。移動スーパー「繫(つな)ごう農村」の軽トラックに乗って訪れた看護師の坂本朋子さん(50)は、栃木県那珂川町中心部の元旅館で一人暮らしをする女性(94)に声を掛けた。
 坂本さんは「コミュニティーナース」。大学病院などに勤めていたが、「一人ひとりの幸せに関わる仕事がしたい」と10年前に独立した。医療や介護制度で認められたものではないが、地域に出て住民に密着して健康を支える仕事だ。移動スーパーの従業員として軽トラックに乗り、見守りが必要な人を定期的に巡回している。買い物前に体調や通院の様子などを時間をかけて聞く。
 元旅館の女性からは、腸閉塞(へいそく)になったという話を聞き、消化のいいおかずがつくれる食品を勧めた。坂本さんは「移動販売なら構えることなく話せる。体調に応じた食品を勧めることで健康維持につなげたい」と話す。
 坂本さんと情報交換をしているという同町のケアマネジャー深沢いづみさんは「介護保険では頼まれた買い物はできるが、販売車だと高齢者が自分で商品を選べる。それがいい刺激になっている」と指摘する。
 訪問先は80代以上の高齢者が中心だ。自宅に閉じこもりがちな人も多く、話し相手になるのも大事な仕事という。家事を依頼されることもある。
 坂本さんは「高齢者が暮らしで必要なものは病院にいるだけでは分からない。やりがいある仕事です」。
     ◇
 那珂川町の大型スーパーに、デマンドタクシーから降りた80~90代の男女8人が、談笑しながら入店した。同町浄法寺地区の住民向けに2年前から毎月開かれる「買い物ツアー」だ。
 ボランティアとして同行するのは、町の委託でデマンドタクシーを運行するタクシー会社取締役後藤直美さん(56)と、ツアーを主催する民生委員伊藤靖子さん(72)。
 後藤さんは管理栄養士でもある。栄養価の高い食品や減塩など、健康のアドバイスができる。買い物後、休憩スペースで健康づくり講座も開く。
 11月に初参加した小林邦雄さん(91)、千代さん(88)夫妻は、この夏にけがや病気をし、周囲の勧めで車の運転をやめた。「外に出なくなると退屈。みんなで楽しく買い物できるのはいい。アドバイスもありがたい」
 後藤さんは、特別養護老人ホームで20年近く栄養管理の仕事に就いた経験がある。やりがいも感じていたが、後継ぎがいなかった家業のタクシー会社を継ぐために6月にホームを退職したが、健康管理に関わる仕事に未練があった。
 そんな時、伊藤さんが開くツアーにボランティアとして参加。楽しそうに買い物をする高齢者らを見て、「自分の経験が生かせる」と感じた。
 ツアーは浄法寺地区だけの取り組みだが、後藤さんは、他地域でもニーズがあると考えている。「対象地域を広げ、安否確認を兼ねたサービスを広げたい」と話す。