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「ボランティア自粛論」はねのけ能登へ 福島の学生が感じたこと
2024.11.15
福島大の学生たちが、元日に大地震に見舞われた能登半島に通っている。高齢者宅で家財を片付け、9月の豪雨で浸水した家では泥かき。「二重災害」に遭った現地の復旧の歩みは遅く、「まだまだ人手が足りていない」と訴える。
10月12日早朝、学生団体「福島大学災害ボランティアセンター」(災ボラ)のメンバー4人は石川県七尾市に着いた。前日夕に福島市内を出発し、乗用車を運転してきた。
初日はボランティアの作業を割り振りするNGOの指示で、七尾湾に浮かぶ能登島へ。高齢者夫婦の家に入り、手つかずになっていた2階の部屋からタンスや電化製品を運び出した。翌日から2日間は豪雨被害に遭った輪島市で、住宅の床下にたまった汚泥をかき出した。
災ボラは東日本大震災をきっかけに発足。東京電力福島第一原発事故で避難指示が出た地域や避難者が暮らす復興公営住宅に足を運び、住民と交流を重ねる。主要メンバーは約30人で、活動の度にアプリで他の学生らに参加を呼びかける。
3月からはほぼ毎月、能登半島地震の被災地にボランティアを派遣。これまでに延べ60人が参加した。
10月の活動は豪雨後初めてだった。参加した村岡諒彦さん(19)は「輪島市はまだ道路もガタガタな状態。復興に向かっていたところに水害が起き、住民は『いつになれば復旧するのか』と途方に暮れていた」。菅野凌大さん(18)は、浸水した1階が使えず2階で生活する住民の姿に「居住スペースが限られて相当なストレスがあるはずだ」と感じた。
豪雨では大きな被害を免れた七尾市でも、繁華街は日常に戻りつつある一方、住宅の中は片付けが進んでいないというギャップを目にしたという4人。河合秀伸さん(20)は住民女性が「自殺する人の気持ちが分かる」と話す姿に心を痛めた。黙ってうなずくことしかできなかったという。
元日の地震の直後、石川県は渋滞対策などのため一般ボランティアの活動を控えるよう呼びかけた。SNSでは「行かないことが支援」といったボランティア自粛論が広まった。
災ボラでも当初、現地には行かず、学内での募金にとどめた。3月に有志と初めて現地入りした安部聡希さん(19)は「2カ月経っても家の中は地震翌日かのような散乱状態で、ボランティアの人手は追いついていなかった。SNSの情報をうのみにせず自分の目で見たことが大事だ」と感じた。
福島で被災者に寄り添ってきた経験が能登での活動にも生かされている。作業の休憩中、住民と接する機会がある。「ここまで頑張ってきたことがすごい、とリスペクトしながら耳を傾ける」という安部さん。「僕らに話すことで心の荷を下ろしてもらえたら。福島で培ってきたものを今後も能登で生かしたい」と話す。(酒本友紀子)
10月12日早朝、学生団体「福島大学災害ボランティアセンター」(災ボラ)のメンバー4人は石川県七尾市に着いた。前日夕に福島市内を出発し、乗用車を運転してきた。
初日はボランティアの作業を割り振りするNGOの指示で、七尾湾に浮かぶ能登島へ。高齢者夫婦の家に入り、手つかずになっていた2階の部屋からタンスや電化製品を運び出した。翌日から2日間は豪雨被害に遭った輪島市で、住宅の床下にたまった汚泥をかき出した。
災ボラは東日本大震災をきっかけに発足。東京電力福島第一原発事故で避難指示が出た地域や避難者が暮らす復興公営住宅に足を運び、住民と交流を重ねる。主要メンバーは約30人で、活動の度にアプリで他の学生らに参加を呼びかける。
3月からはほぼ毎月、能登半島地震の被災地にボランティアを派遣。これまでに延べ60人が参加した。
10月の活動は豪雨後初めてだった。参加した村岡諒彦さん(19)は「輪島市はまだ道路もガタガタな状態。復興に向かっていたところに水害が起き、住民は『いつになれば復旧するのか』と途方に暮れていた」。菅野凌大さん(18)は、浸水した1階が使えず2階で生活する住民の姿に「居住スペースが限られて相当なストレスがあるはずだ」と感じた。
豪雨では大きな被害を免れた七尾市でも、繁華街は日常に戻りつつある一方、住宅の中は片付けが進んでいないというギャップを目にしたという4人。河合秀伸さん(20)は住民女性が「自殺する人の気持ちが分かる」と話す姿に心を痛めた。黙ってうなずくことしかできなかったという。
元日の地震の直後、石川県は渋滞対策などのため一般ボランティアの活動を控えるよう呼びかけた。SNSでは「行かないことが支援」といったボランティア自粛論が広まった。
災ボラでも当初、現地には行かず、学内での募金にとどめた。3月に有志と初めて現地入りした安部聡希さん(19)は「2カ月経っても家の中は地震翌日かのような散乱状態で、ボランティアの人手は追いついていなかった。SNSの情報をうのみにせず自分の目で見たことが大事だ」と感じた。
福島で被災者に寄り添ってきた経験が能登での活動にも生かされている。作業の休憩中、住民と接する機会がある。「ここまで頑張ってきたことがすごい、とリスペクトしながら耳を傾ける」という安部さん。「僕らに話すことで心の荷を下ろしてもらえたら。福島で培ってきたものを今後も能登で生かしたい」と話す。(酒本友紀子)