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子どもたちの「できる」に寄り添う学習支援ボランティア【キッズドア】

掲載日:2023.07.21

経済的な事情やひとり親世帯などの理由で、子どもが必要な教育を十分に受けられず、将来の夢を諦めてしまうケースがあります。そんな子どもたちのために、無料の学習会を開催しているのが認定NPO法人の「キッズドア」です。学習会を支えているボランティアの活動を取材しました。

子どもたちに学びの機会を 無料の学習会を開催

今回訪れたのは、キッズドアが中野区で運営している無料の学習会「みらい塾」。毎月第2・第4土曜日の午後に、小学4年生から中学生までを対象にした学習サポートを行っています。

子どもたちは担当のボランティアとおしゃべりをはさみながら、自分たちの勉強を進めていきます。

生徒とボランティアは基本的にマンツーマン。子どもたちは持参してきた教材を使って、宿題やテスト対策、苦手な教科の勉強に取り組みます。
学習の進め方は生徒によって異なりますが、共通しているのは、勉強を教えることに重きを置くのではなく、子どもに寄り添い、「ほめる」ことを大切にしているということです。

キッズドアは「経済的格差が教育格差であってはならない」という考えに基づき、2007年に設立されました。みらい塾のように、キッズドアが設置・運営している学習会のほかに、自治体からの委託により運営している学習会などもあります。

首都圏と東北エリアでオンラインを含めて84の教室を展開し、2千人を超える子どもたちが学んでいます。そしてなんと、1,300人を超えるボランティアが学習会を支えています。

出典:「認定NPO法人キッズドア2022年度事業報告書」より

子どもたちに寄り添う「みらい塾」のボランティア

生活協同組合コープみらいから届けられたお菓子は、休憩時間に子どもたちに配られます。

みらい塾の会場は、生活協同組合コープみらいの建物内。おやつタイムのお菓子もコープみらいから提供されているそうです。生徒の定員は約30人で、登録にあたっては家庭の環境や経済状況などを考慮。中野区の外から通っている子もいます。

この日は15人の生徒が出席し、ボランティアは20~70代の16人。教室の雰囲気は和やかですが、あちこちから話し声が聞こえ、活気にあふれています。一方で、もう一つの小さめの教室では受験を控えた中学生が学んでおり、こちらはより真剣なムード。

小学5年生が取り組んでいたのは漢字ドリル。学校で進んでいるところからの遅れを取り戻すため、今日は集中するとのこと。「ここは退屈しないし、楽しい」と、学校や家で勉強するのとは違った魅力を感じているようです。

子どもたちが楽しく勉強できるよう、笑顔でしっかりとコミュニケーションを取りながら進めていました。

隣で見守っていたボランティアの梅本智夏さん(25)は「大切にしているのは、生徒をけっして否定しないこと。その日の相手の表情を見て、積極的にコミュケーションを取っています」と言います。

会社勤めをしながらボランティアを続ける理由について、梅本さんは「コロナ禍があって人と会話する機会が減っても、毎回いろんな生徒が来てくれて、いろんな話をしながら教えられるのは、自分の心の拠り所にもなっています」と語っていました。

10分のおやつタイムを挟んで、約2時間の学習会が終了します。最後に、ボランティアが今日できたことなどのポジティブなコメントを生徒の連絡帳に書き込み、子どもたちに手渡すと、その日の学習会は終了です。

子どもたちが帰った後もボランティアはミーティングを行い、気づいたことや指導に関するアドバイスなどを情報交換。一人ひとりの学習状況なども進捗管理シートに記入し、ボランティア同士で情報を共有していました。

学習会を支える方々の想いとは

キッズドアの東(ひがし)さん。教え方よりも寄り添う姿勢が重要だと話します。

「『教える』というとハードルが高く感じるかもしれませんが、『側にいる大人が必要』と考えると、それだったらできるという方もいらっしゃると思います。一緒に勉強したい、勉強を好きになってもらいたいという気持ちがあれば大丈夫です。子どもの変化は1回や2回で出るものではなく、種まきして芽が出るまで待てるかが大切です。」と、キッズドアの東操さん。それだけに、成長が感じられた時の喜びは、何ものにも代えがたいものがあります。

ボランティアの多くが、子どもに教えた経験はゼロ。「説明会を開催し、学習会の特色や心構えをお伝えしています。また、初回の活動時には、行動規範のガイドブックをお配りし、どのように子どもたちに接したらいいかを把握していただいています。学習会前後のミーティングでは、疑問点や不安なところは周りのボランティアに相談することができます。近所のおばちゃん・おじちゃんみたいな感じで接していただければいいと思います。一番大事なのは、子どもに寄り添うことです。」と東さんは語ります。

会社員の中島健二さん(34)も、学生時代に未経験でキッズドアのボランティアに参加。以来、約10年間ボランティアを続け、生徒が卒業後も教室を訪れる人気の先生の一人です。

「モチベーションは、生徒や他のボランティアとの関わり。子どもたちの笑顔からは元気をもらえて、仕事の疲れも忘れられます。また、ボランティアも生徒の良いところを引き出そうとするポジティブな姿勢の方が多く、とても居心地が良いです」と話してくれました。

ボランティアの中島さん。日々、子どもたちとのコミュニケーションを工夫して活動に臨んでいるといいます。

子どもたちと関係を築くうえで、中島さんが大切にしているのが、【1】声掛けや動作で楽しませること、【2】子どもの興味に合わせて、同じ目線で話題を膨らませること、【3】キャラクターの絵を描いて見せて、打ち解けるきっかけを作ること、の3つ。

自身のお給料を例に算数の問題を作ったり、あえて下手なキャラクターの絵を「うまいでしょ」と披露して笑いをとったりと、子どもたちに人気なのも納得でした。

学習会では必ず生徒のいいところを見つけてほめるようにしているため、ボランティアを通して、他人を肯定的に見るようになったといいます。それは仕事現場でも同じで、広い心で周囲と向き合えることが役に立っているそうです。

解き方や答えがわからない問題に出会ったときはどうしたらよいのか聞いてみると、ベテランの中島さんでも答えがわからない問題はあるということでした。

「そんなときは、他のボランティアさんに聞いたら教えてもらえるし、大人が悩む姿勢を子どもに見せることも大切。教えることへの不安は感じなくて大丈夫です。教える技術よりも、生徒と対等に向き合う気持ちがあればよいと思います。おしゃべりするだけで、その子のロールモデルの一人になっています。まずは遊びに来る感覚で来てもらえたら。」

キッズドアは各地域で、学習支援のボランティアを募集中。まずは説明会に参加してみませんか。子どもたちの成長に寄り添いながら、みなさんにとっても大切な居場所が見つかるかもしれません。