ボランティアはじめの一歩

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中高生のボランティアグループ「VIOLET!!」とは? 1年間の集大成となるイベントに密着

掲載日:2023.06.09

ボランティアに興味のある中高生の皆さん、自分も活動してみたいと思いませんか?経験の有無や年齢にかかわらず参加できるボランティアは、たとえ学校や地元にはなくても、都内全体に目を向けてみると、見つけることができます。なかには、若い年代が主体的に活動している団体もあります。その一つが、さまざまな中学や高校の生徒が交流しながら月1回活動しているボランティアグループ「VIOLET!!」(バイオレット!!)。1年の活動の集大成として企画したイベントの模様を紹介します。

中高生が意見を出し合ってイベントを企画運営

2月のある日曜日、飯田橋駅前のビルの会議室に、「VIOLET!!」のメンバーが集まってきます。会場は、東京ボランティア・市民活動センター(TVAC)のあるビルの一角。高校1年生と2年生を中心に、約20人の生徒たちが談笑していました。

「VIOLET!!」の名前は、スミレの花言葉「誠実、幸せ」などが由来。ボランティアに興味のある中高生や、ボランティア部の活動として参加している生徒が、他校の生徒と一緒に活動しています。

メンバーは入り口で、ニックネームの書かれた名札、お菓子やジュースを受け取ると、自分のグループのテーブルに着席。ニックネームで呼び合うことと、同じ学校の人はできるだけ固まらないことの2つが、「VIOLET!!」のルールです。

この日の活動は、翌月に迫ったイベント「中高生ボランティアフェスティバル2023」に向けた話し合い。まずは自己紹介からスタートです。「バレンタイン」をテーマに一人ずつ近況などを話すと、お菓子や人間関係の話題で盛り上がりました。

自己紹介するメンバーの様子。様々な学校から集まってきている「VIOLET!!」メンバーたちにとって自己紹介は欠かせません。

「中高生ボランティアフェスティバル2023」は「VIOLET!!」が企画・運営を担っています。昨年10月から意見交換を重ねて、この日は準備の最終段階。当日はボッチャ体験などの交流会と防災をテーマにした2つの分科会から構成されるため、3つのグループに分かれて段取りや各自の役割などを決めます。分科会の講師にも同席してもらい、話す内容や時間配分なども詰めていきます。

「VIOLET!!」メンバー自ら司会進行や意見集約などを行っていました。

「VIOLET!!」の活動は基本的にメンバーが自ら進行しますが、TVACの職員や高校のボランティア部の先生たちもアドバイス役としてサポートしています。

4年ぶりにリアル開催「中高生ボランティアフェスティバル」

イベント当日の様子。準備していたイスがほとんど埋まってしまうほどの盛況ぶりでした。

ボランティアフェスティバルの当日を迎えました。飯田橋の会場にはボランティアに興味のある中高生約70人が参加者として来場。コロナ禍を経て4年ぶりのリアル開催となり、当初の定員を超える大盛況です。

6人程度のグループに分かれ、青いビブスを着たメンバーがそれぞれのグループに入ります。最初にバースデーライン(会話をせず誕生日順に並んでタイムを競うゲーム)に挑戦。初対面の緊張がほぐれたら、メンバーの活動「環境」「動物保護」「子ども・イベント」「多様性」に分かれたブースを回り、交流を深めました。

当日はメンバーが登壇し、自らまとめた活動報告を発表する場面もありました。

メンバーは昨年4月から、他のボランティア団体のゴミ拾いの活動に参加したり、視覚障がい者が使う白杖や点字の体験などを行ってきました。ブースには、そこで学んだことのパネル展示や、動物保護クイズ、河川敷の土のサンプルからマイクロプラスチックを探すコーナーなどが設けられました。

マイクロプラスチックを探すコーナーではメンバーが主体的に当日の参加者に方法をレクチャーしていました。

パラスポーツ競技のボッチャや、自分の名前を点字器で打つ体験なども好評です。メンバーは各グループの誘導や、ブースの説明、ボッチャの競技説明や盛り上げ役などの役割をこなしていました。

ボッチャのコーナーでは、「VIOLET!!」メンバーと参加者が真剣にプレーし、大きな盛り上がりをみせていました。

続く分科会のテーマは、外部の講師による「自分を守る基礎知識」と、「自分に合った非常食を選ぼう」。担当のメンバーは、事前に聞いておいた講師の方の趣味なども盛り込みながら、司会進行や講師の紹介を行い、災害時に自分をどう守るのかをみんなで学びました。

最後に、グループで「学んだこと」「今日からできること」を話しあって、避難や非常食の準備などのアイデアをふせんに書き出しました。ふせんを模造紙に貼りだして各グループが発表し、4時間のイベントは無事に終了しました。

参加した高校2年の女子生徒は「1度はボランティアに参加してみたかった。今回勇気を出してイベントに来てみると、知識が増えて友達もできて良かったです」、中学1年の女子生徒は「ボランティアを通じていろんな人の話を聞けると知り、楽しそうなので私もやってみたいです」と話していました。

最後に全員で記念撮影し、イベントは盛況のうちに幕を閉じました。

他校との交流から生まれる新しい発見

左から「VIOLET!!」メンバーのひなたさん、さとさん、ゆづさん、ゆいなさん。

「VIOLET!!」のメンバーにも話を聞きました。都立第一商業高校1年のひなたさん、都立練馬高校2年のさとさん、都立赤羽北桜高校1年のゆづさん、都立文京盲学校3年のゆいなさんの4人です。(学年は取材当時のもの)

ゆいなさんは「中高生の皆さんの防災の意識が高いことが感じられて、企画した側としてすごくうれしいです」、動物保護クイズを担当したゆづさんは「自分で企画することで責任感が生まれます。ありがとうと言われるとやりがいを感じました」と感想を語ります。

イベントは「貴重な機会になった」とメンバーたち。TVAC職員の榎本朝美さんも「一人ひとりの成長を感じました。この経験を次のステップにも生かしてほしい」と感慨深げです。

「VIOLET!!」の魅力について、ひなたさんは「学校ではグループワークの機会は少ないため、意見を出し合ってまとめていくのが楽しいです。他校の生徒と交流するのは、すごく特別な経験だと感じています」。ゆづさんは「人見知りの人でも、企画を話し合ったりして一緒に取り組むから、絆が生まれて社会性も高まっていく気がします」と話していました。

それぞれ「VIOLET!!」の活動に対する熱い思いを語ってくれました。

「学校や学年の垣根を越えて活動するので、新しい視点に気づくことができます。自分の考え方が広がっていく充実感を感じられるのが魅力」と、ゆいなさん。視覚に障がいがあるためにボランティア活動を断られたこともあるといいます。それでも、自分ができる活動はないかとTVACに相談したのが活動のきっかけ。メンバーに点字を教える経験で新たな気づきを得て、現在は点字塾の起業を目指して奮闘中です。

4月からもメンバーは随時募集中。ひなたさんは「『VIOLET!!』に来て、僕も新しい考え方ができるようになりました。積極的に自分を高めたいという人にもおすすめです」、さとさんは「個人や部活動ではできないことや、勇気が必要なことでも、みんなで楽しみながら進んで行けます。コミュニケーション力もとても磨かれました。ボランティアをしようか迷っている人は、ぜひ一歩を踏み出してほしいと思います」と呼び掛けていました。

4人の話を聞いて、他校のメンバーとの話し合いや企画を通して、新たな価値観に触れ、気づきや学び、つながりが生まれるということがよくわかりました。メンバーたちのコミュニケーション力の高さにも納得です。

少しでも興味のある人は、ぜひ、一歩を踏み出してみてください!